ニューヨーク・タイムズスクエア、夜9時。 ネオンと雑踏が交差する都市の中心で、GUCCIは“GucciCore”という名の新章を切り開いた。 それは単なるファッションショーではなく、都市の緊張・身体の爆発・ラグジュアリーの再定義を一夜に凝縮した視覚体験。
この記事では、ショーの背景にある思想から、ルックの詳細解説、そして GucciCore ステートメントの読み解きまで、GucciCoreの核心を立体的にまとめていく。
80年代NYの“止まった瞬間の爆発”
ニューヨークの摩天楼がまだ少し荒々しく、 アートもファッションも“都会の緊張”をまとっていた1980年代。 その空気を、たった一枚の絵で語り尽くしてしまうアーティストがいた。 Robert Longo(ロバート・ロンゴ)。
彼の代表作 《Men in the Cities》 は、 まるで映画のワンシーンを切り取ったような、 スーツ姿の男女が突然はじけ飛ぶ瞬間を描いたシリーズ。
白と黒だけで描かれた、巨大なドローイング。 そこにいるのは、都会的で洗練された男女。 だけど彼らは、ただ立っているわけじゃない。体をねじり、倒れ込み、何かに驚きあるいは撃ち抜かれたようにのけぞる。
“何が起きたのか”は描かれない。 だからこそ、観る側の想像が一気に膨らむ。

《Men in the Cities》は、80年代NYの象徴と言われる。 理由はシンプル。成功と不安が同居する都市の空気を、 身体の動きだけで語ってしまったから。
- スーツ=成功の象徴
- ねじれた身体=都市のストレス
- モノクロ=感情の極限
この対比が、当時の“ヤッピー文化”の光と影を完璧に表現している。
タイムズスクエアで行われた GUCCICORE。 デムナが選んだのは、まさにこの“都市の緊張”だった。
- シャープな肩
- 引き伸ばされたシルエット
- モノクロの強いコントラスト
- 都会のエネルギーが爆発するような演出
これらはすべて、Men in the Cities の世界観と直結している。
GUCCI がNYでショーをするなら、 NYを象徴するアートを引用するのは必然。 そしてデムナの美学と最も共鳴したのが、 ロンゴの“止まった瞬間の暴力性”だった。



NYのリアルを映すGUCCIの最新ビジョン
GUCCIとニューヨークの関係は、70年以上前の五番街から始まった。 今回のショーをタイムズスクエアで行うという選択は、単なる挑戦ではなく、ブランドにとっての帰郷でもある。
デムナが掲げたテーマは、 「不可能を可能にする」──NYの中心にGUCCIを置くこと。 巨大なスクリーンとビルボードをそのまま舞台装置に変え、街そのものをランウェイにした。
そして今回のコレクションは、彼が続けてきた“キャラクタースタディ”の第4章。 La Famiglia、Generation Gucci、Primavera── これらの美学をひとつに束ね、GUCCIの核となるスタイル言語を再構築する試みだ。
その中心にあるのが GucciCore。 ピーコート、トレンチ、ビジネススーツ、シャツ、ペンシルスカート。 “日常で着られるリアルさ”と“GUCCIらしいエレガンス”を両立させた、永続的に進化する基礎服のコレクションである。

各ルックが語る、都市の物語
黒スーツとリンゴのコントラスト

黒の端正なスーツに、リンゴの赤が一点だけ置かれることで、ルック全体に強い物語性が生まれる。直線的なテーラリングが都市の緊張を描き、その中に差し込まれた赤が“日常の中の異物”として視線を奪う。NYという街で起こる小さなドラマを象徴するような一体。
歩きながら魅せるブラックテーラリング

歩行によってジャケットのラインが揺れ、シルエットが完成するルック。黒のミニマルさがNYのスピード感と重なり、動きの中でこそ美しさが際立つ。ロンゴ的な“瞬間の身体性”を最も素直に体現した一体。
ダブルブレストとミニ丈のバランス

重厚なダブルブレストの構築性に、ミニ丈の軽さが加わることで、クラシックとモダンが共存する。金ボタンの存在感が上半身に重心を置き、脚の軽さが都市の自由さを象徴する。強さと軽快さの絶妙なバランス。
ファーとレザーの質感ミックス

ブラウンファーの豊かさとブラックレザーの硬質感がぶつかり合い、80年代NYの“成功と不安”を質感で語るルック。柔らかさと暴力性が同居し、都市の複雑な空気をそのまま纏ったような存在感がある。
ファーカラーが主役のブラックルック

黒のジャケットにファーカラーが加わることで、柔と剛のコントラストが際立つ。ファーのボリュームが“都市で身を守る防御線”のように機能し、シンプルな黒の中に確かなドラマを生む。
シャツドレスとファーのレイヤード

ストライプシャツドレスの端正さに、グレーファーのボリュームが重なることで、日常と非日常が自然に交差する。花束が加わることで、都市の中でふと生まれる“静かな物語”が立ち上がるルック。
レザー×スネーク柄の強さ

黒レザーの硬さとスネーク柄パンツの攻撃性が組み合わさり、ストリートの強さをラグジュアリーに昇華した一体。柄の強さが都市の野性を象徴し、NYの混沌をそのまま纏ったような存在感がある。
レザーとローライズデニムのY2Kムード

ローライズデニムの抜け感にレザージャケットの重さが加わり、Y2Kの自由さを現代的に再構築。若さ・反抗・軽さが同時に立ち上がり、NYのストリートを歩くリアルな若者像が投影されている。
オーバーサイズとレースのコントラスト

大きな黒ジャケットの強さの中に、レースの繊細さが覗くことで、強さと儚さが同時に成立するルック。ロンゴ的な“緊張と脆さ”の同居が、シルエットの中で美しく表現されている。
ジャケットとバンドゥのカラーアクセント

黒のジャケットにグリーンとレッドのバンドゥが差し込み、着崩しの美学が都会的な抜け感を生む。色のアクセントがNYの多様性と自己表現の強さを象徴し、自由なスタイリングの可能性を示す。
フェザーテクスチャが生む前衛シルエット

フェザー状のテクスチャが動きを生み、静止していても“動いて見える”彫刻的なルック。素材そのものが都市のエネルギーを語り、ロンゴの身体性と最も強く共鳴する前衛的な一体。
ライトファーとフリンジの光感

ライトファーの軽さとシルバーフリンジの光が幻想的な軌跡を描き、都市の夜を纏うようなルック。タイムズスクエアの光を反射する“動く光景”として成立し、ショーの締めにふさわしい余韻を残す。
アシンメトリーが際立つブラックスーツ

黒のダブルブレストスーツにアシンメトリーなフロントが加わり、クラシックに現代性を与える。白シャツと黒タイの端正さが縦のラインを強調し、都会的な緊張感を生む。ミニマルなクラッチが全体を引き締めるアクセントに。