1839年、ルイ・ダゲールによる写真の実用化は、その後の映像エンターテインメントの爆発的な普及の起点となった。
その過渡期にあたる1880年代のドイツで親しまれたのが、円柱形の装置を囲んで立体画像を覗き込む「カイザー・パノラマ」である。

かつて映画の台頭によって姿を消したこの視覚体験を、アレッサンドロ・ミケーレはヴァレンティノ 2026年オートクチュールコレクションにおいて、現代的な解釈で蘇らせた。
会場に点在する白い円柱を囲み、観客は小さな窓越しにショーを鑑賞する。この「視界を制限し、装置を介して対象を仰ぎ見る」という形式は、ファッションを単なる衣服ではなく、一種の神聖な儀式や崇拝の対象へと昇華させていた。
そこで表現されたのは、1920〜40年代のハリウッド・グラマーを彷彿とさせる、贅を尽くした洗練の美。それは、若き日の創業者ヴァレンティノ・ガラヴァーニが魅了された「銀幕の神々」へのオマージュでもある。
かつて映画スターが神格化されていた時代の熱狂を、ミケーレは覗き窓という「聖域」を通じて、現代のランウェイに再現した。

鮮やかなレッドカラーが印象的なフロアレングスのガウン。深く開いたVネックラインと、ゆったりとしたロングスリーブが特徴的で、ウエスト部分にドレープを寄せた優雅なシルエットを描いている。


シアー(透け感のある)素材に、繊細なシルバーのビーズが垂直に刺繍されたロングドレス。裾や袖口には華やかなレースの装飾があしらわれている。
頭部には太陽の光を思わせる印象的なゴールドのヘッドピース(後光のような飾り)を冠しており、儀式的で神聖な雰囲気を醸し出している。


細かなビーズやフリンジが施されたゴールドとシルバーの装飾的なビスチェと巨大なオフホワイトのファーの襟が特徴的な、マキシ丈のガウン風コート。アイボリーの生地には黒の精緻な刺繍や模様が施され、袖口と裾には黒のファーが贅沢にあしらわれている。


光沢感のあるメタリックな質感の素材、深いVネックのラインと精緻なプリーツ加工が施されたメタリックブルーのロングドレス。胸元や肩のラインには、彫刻的な造形美を感じさせる装飾が施されている。
素材には光沢感のあるメタリックな質感が採用され、動きに合わせて光を反射するようにデザインされている。


深いVネックが特徴的な、煌びやかなピンクのシルク/サテン系ジャンプスーツ。ウエスト部分には、コントラストの効いた大きな赤色のリボンが大胆にあしらわれている。
ピンク色のサテンのような生地で作られたドーム状の帽子と、そこから後光(ハロー)のように放射状に広がるゴールドのスパイクが組み合わされた、印象的なヘッドドレス。


深いダークグリーンのベルベット素材を使用したケープガウン。 袖口やネックラインに施された豪華なゴールドの刺繍と、ウエスト部分のビジューやフリンジ装飾が特徴的である。


メタリックゴールドの質感を持つドレープスカートと精緻な刺繍が施されたシースルーのボディス。衣装と同じゴールドのロンググローブを合わせ、統一感のあるスタイルを完成させている。
放射状に広がる巨大で華やかなゴールドのヘッドドレスを着用しており、圧倒的な存在感を放っている。


衣黒のロングドレスの上に、鮮やかな「ヴァレンティノ・レッド」の蝙蝠袖(バットウィング・スリーブ)のガウン。ガウンとドレスには、太陽の光や炎を思わせる金色のスパンコール刺繍が大胆に施されている。
巨大な黒のオーストリッチの羽根と、太陽の光を象った金色のヘッドピースが組み合わされた、非常に演劇的で誇張されたデザインである。


柔らかなペールブルー(水色)の生地で作られたセットアップ。深いVネックが特徴で、襟元とウエスト部分に立体的なフリルやリボンのような装飾が何層にも重なり、ペプラムシルエットを作り出している。


ゴールドのスパンコールが施されたトップスに、ティール(青緑色)と黒のフリル、そして淡いグリーンの立体的なスカート。背後には、巨大な赤いオーストリッチの羽根の扇のような装飾が配されており、ドラマチックなシルエットを形作っている。


非常に精緻なラメを施したプリーツが特徴的な、彫刻のようなゴールドのドレス。上半身を包み込むような巨大な扇状のプリーツと、ボリュームのあるロングスカートを組み合わせた、圧倒的な存在感を放つシルエットである。

