2026年6月にメンズファッションショーでDior(ディオール)のデビューを飾ったJonathan Anderson(ジョナサン・アンダーソン)が初めてウィメンズのコレクションを発表した。
映画「クィア/QUEER」の監督Luca Guadagnino(ルカ・グァダニーノ)と美術担当Stefano Baisi(ステファノ・バイシ)がファッションショーの演出を担当した。

Jonathan Andersonがこの作品と同監督の映画である「チャレンジャーズ」の衣装を担当しておりデビュー作品という大事なファッションショーを信頼できる人物に任せたようだ。
会場の中央に重力に逆らったように逆向きのピラミッドのディプレイが配置され、その頂点にDiorのシューズボックスが配置されていた。

ドキュメンタリー映画監督のAdam Curtis(アダム・カーティス)がDiorのアーカイブ映像でショートムービーを制作してファッションメゾンの歴史がサイケデリックにマッシュアップされた後ボックスのなかに収納されていくような演出であった。
ショートムービーの最初に”DO YOU DARE ENTER THE HOUSE OF DIOR?”「DIORのハウスに入る勇気はありますか?」という文字がまるでB級ホラー映画で使われるフォントで映し出された。

伝統あるファッションメゾンのデザイナーを引き継いだ人であれば経験する特有の緊張感にJonathan Andersonに悩まされていたであろう。
LOEWEでの成功体験があるにも関わらずLMVHグループの顔となる伝統的なメゾンにおける初めてウィメンズコレクションの制作に相当のプレッシャーを感じていた。
創業のChristian Dior(クリスチャン・ディオール)から先代のMaria Grazia Chiuri(マリア・グラツィア・キウリ)までのクリエイティブディレクターに最大限に敬意を表したいと語っていた。

1947年Dior初のオートクチュール・コレクションで発表されたニュールックと呼ばれたBar Jacket(バージャケット)は前回のメンズコレクションに続いて再解釈された。
全体的に小さくデザインされてクロップド丈までシュリンクされたことによりウエストラインの錯覚を起こしていた。
くびれたウエストから下の部分に大胆にカットを施して大きなリボンを模したようなユーモアのあるデザインも興味深いルックであった。


前回のメンズコレクションでハーフパンツに再解釈された1948年に制作されたDelft(デルフト)ドレスがウィメンズのコレクションでも再登場した。
ドレスの特徴的な深い襞を模したミニスカートへとアレンジされていた。


1949年のオートクチュール・コレクションで登場した花びらのような不揃いのチュールが重なってデザインされた伝説的なJunon(ジュノン)ドレスをオマージュしたルックがブランドの熟練されたクラフトマンシップを表していた。
花びらを模した半円はより細かくなり丁寧に装飾されたドレスのデザインは美しく伝統的なメゾンの細緻を極めた職人技に基づいていた。


1952年秋冬オートクチュール・コレクションで制作されたLa Cigale(ラ・シガール)ドレスのようなスカートの膨らんだ部分を鋭角的にデザインされたドレスが凛々しくあり可憐であった。
繊細なレース素材を丹念に装飾して角ばるように骨組みされたクリノリンに被せて構築された透け感の強いドレスは力強さもあり精巧なデザインとなっていて後ろ側には妖精のようにリボンが仕立てられた。


今回のコレクションのハイライトのひとつであるシガールの名前を受け継いだ新しいバッグが誕生したことであった。
中央に控えめにリボンの結び目が装飾されたバッグでDiorを代表する誰もが憧れるバッグになるかもしれないアイテムである。

Diorの代表的なシルエットであるHラインやAラインを再構築されたルックもいくつか見受けられた。
1954年秋冬アートクチュールで発表されたウエストを絞らずに肩から裾までが直線的なHライン、1955年春夏アートクチュールで発表された肩幅を狭くして裾に向かって広がるようなAラインを模したルックである。


Aラインのオーバーサイズよりのジャケットの重点が上のほうにずらされて空間が歪んでいるようにデザインされた。
ブルーとライトグリーンの色鮮やかなHラインのレースのワンピースには丁寧にピーズで押し花を模した細かな装飾されていて、スカートが広がるようにいくつものレース生地がぶら下がっていた。


1957年秋冬アートクチュールで発表された大きなリボンが特徴的なDu Barry(デュ・バリー)ドレスを参考にしたドレスがファーストルックを飾っていた。
クリノリンで形成された彫刻のように斜めにギャザーの入ったドレスに2つ左右非対称に上下に大きなリボンが装飾されていた。


Jonathan Andersonが得意とするドレープ、プリーツを用いたボリューム感のある独自のラインをDiorに新しい息吹をもたらした。
プリーツ入りのパンツとトップスのルックがどれも流れるように綺麗であり、スカートの膨れた部分がリボンにより織り込まれていた。



両側にコブが付いたようなドレープの個性的なドレス、足元に大きなバラが咲いたようなヒールに魅了された。
透け感のあるレースやふわふわのニット素材を使ったバリエーション豊かなパフスカートやバブルドレスのルックも登場した。



襟が高めのシャツやジーンズなどよりカジュアルなアイテムを取り入れてコレクションを制作していた。
そのほかにはカットオフのジーンズやレザーのミニスカートのルックは若い世代をターゲットとしているルックであった。


