Kim Jones(キム・ジョーンズ)とMaria Grazia Chiuri(マリア・グラツィア・キウリ)が退任したあとメンズとウィメンズのクリエイティブディレクターに就任されたデザイナーの初のコレクションが発表された。
Diorの顔となり注目と期待のプレッシャーがかかるなかJonathan Anderson(ジョナサン・アンダーソン)が2026 Dior(ディオール)メンズサマーファッションショーを開催した。

一面が照明になった天井、白い壁、ヘリンボーン模様の床のシンプルな会場はドイツのベルリン絵画館をモチーフにしている。
ヨーロッパを代表する絵画を専門とする美術館であり13世紀から18世紀までの多数の作品展示している。


絵画館の部屋を模した会場には少し物足りない気がするがショーのために借りた二枚の貴重な絵画が飾られていた。
どちらも18世紀に活躍したフランスの画家Jean-Baptiste Siméon Chardin(ジャン・シメオン・シャルダン)による作品である。
一つ目がスコットランド国立美術館に展示されている「花瓶の花」(1750~1760年代)、二つ目がルーヴル美術館に展示されている「いちごのバスケット」(1761)である。


Loewe(ロエベ )での輝かしい経歴を誇るアイルランド出身のデザイナーのDior(ディオール)での初となるショーなので注目度が非常に高まっていた。
ショーが開催される前にデザイナーはアメリカのアーティストであるAndy Warhol(アンディ・ウォーホル)が撮影した二枚のポロライド写真にDior(ディオール)のロゴを付けて公開していた。
一つ目の写真の人物はアメリカの画家であるJean-Michel Basquiat(ジャン=ミシェル・バスキア)である。彼はまるで落書きのようなスタイルで貧富の差など不平等な社会を批判するような力強い作品を残した。
社交界の華、ファッションアイコンの名声を持つLee Radziwill(リー・ラジヴィル)が二つ目の写真に写っている。彼女はアメリカ大統領ジョン・F・ケネディの妻のJacqueline(ジャクリーン)の妹でありそのエレガンスのファッションスタイルで20世紀後半のファッションリーダー的存在であった。
ジョナサン・アンダーソンは写真と一緒に以下の説明を添えておりDiorでの再出発となる旅路の前に初心に戻って彼のデザインに影響を与えた存在を振り返っている。
「この旅を始めたとき、私にとってスタイルの典型であるバスキアとラジヴィルの写真に何度も立ち返りました。」


Jonathan Anderson(ジョナサン・アンダーソン)により再解釈されたDior(ディオール)を代表するバージャケットのルックがショーのハイライトのひとつである。
ドニゴールツイード生地で仕立てられたウエストを絞ったジャケットとまるでバルーンスカートのようなボリュームのあるショーツのルックに仕上げた。



今回のコレクションでは現代と過去、フォーマルとカジュアルなど複数の次元での二項対立がテーマとなっている。
ベロア素材のフォーマルなイブニングコートを素肌の上から着用して、脱色された淡いブルーのカジュアルジーンズの合わせたルックがまさに対立を極端に表している。
ナポレオンが活躍した時代の軍服のような過去の衣装をモチーフとしたコートと現代のシャツとスラックスを対比させたルックも登場した。



パーパル、グリーン、オレンジといった色鮮やかな少し丈の短いケーブルニットの衣装もそれぞれデザインが異なりこだわりを感じられる。
全体的にはカジュアルよりで洗練されたシンプルな衣装が多いが、フォーマルを表すネクタイをあえてルーズに結んだり、タキシードをクロップド丈にカットしたりJonathan Anderson(ジョナサン・アンダーソン)らしい遊び心の要素も詰まっている。



Jonathan Anderson(ジョナサン・アンダーソン)はDior(ディオール)の世界を探求していまだ学び研究している最中であると語っている。
来年の春のクルーズショーまで5つのコレクションが発表されると示唆しており彼がどのようにDior(ディオール)のデザインを再構築、創造するか待ちきれない。