小さな白いベル型の花が可愛らしいスズランは5月ごろに咲くヨーロッパでは春の訪れを告げる花として知られており幸せの再来、純粋や謙虚などを意味して古くから様々な地域の神話や伝承でスズランが登場している。
フランスでは5月1日に家族や恋人など親しい人にスズランを送る習慣があるほど特別な花として認識されている。

Christian Dior(クリスチャン・ディオール)が幼少期を過ごしたフランスのGranville(グランヴィル)にある豪邸に豪華な庭園が備え付けてありスズランはもちろん多種多様な花々が咲き誇っていた。
美しい花々に囲まれて過ごしたデザイナーが花の魅力に惹かれて花を愛するようになった。
そのシルエットをデザインに考案するほど花は彼のデザインのアイディアの主要な部分であった。
そのなかでも抜きん出てスズランを愛していた迷信深いデザイナーはスズランを幸せの再来を象徴してドレスのデザインや装飾として取り入れていた。

1954年にスズランをメインテーマとした”Muguet”(ミュゲ:フランス語でスズランの意味)ラインを発表した。純白な白一色でスズランのベルの形をモチーフとした清楚なドレスルックが象徴的である。
その3年後の”Libre”(リーブル:フランス語でスズランの意味)ラインでスズランの名前を冠した”Muguet”ドレスを発表した。ベル型のスカートの白のドレスで豪華にスズランをボーダーのように飾っている。


スズランの香りは非常に心地よく気品が高いように感じられ香水としてひとつのテーマとなっている。そのなかでも1957年に伝説的な調香師であるEdmond Roudnitska(エドモン・ルドニツカ)によってDiorの香水の中でも名作であるDiorissimo(ディオリッシモ)が誕生した。
1957年に創設者のChristian Dior(クリスチャン・ディオール)が亡くなったあとも後続のデザイナーは敬意を表してスズランを特別な花として様々なコレクションで取り入れてきた。1960年からおよそ30年間に渡ってクリエイティブディレクターを務めたMarc Bohan(マルク・ボアン)は”Bonheur”(ボヌール:フランス語で幸運の意味)というドレスを発表している帯とベールの部分にスズランが飾られている白色のドレスである。


1987年にはChristian Dior(クリスチャン・ディオール)のブランド設立40周年を記念としてDIOR Paris 30 Montaigne(パリのモンテーニュ30番地区にあるDior本店)のブティックの外観にスズランが飾られた。
1999年にVictoire de Castellane(ヴィクトワール・ドゥ・カステラーヌ)が監修したDior初のFine Jewelry(ファインジュエリー)でもスズランをモチーフとした豪華なネックレスが発表された。


John Galliano(ジョン・ガリアーノ)が主導した2007年秋冬Haute Couture(オートクチュール)コレクションでスズランのコサージュが登場した。
コクションショーのファーストルックで当時スーパーモデルとして世界的に人気を誇ったGisele Bundchen(ジゼル・ブンチェン)の襟元に飾られた。
ブランド設立60周年を祝い記念すべきコレクションでDiorらしい黒の”Bar Jacket”(バージャケット:1947年登場の女性のボディラインに沿ってデザインされたシルエットが特徴のジャケット)とロングスカートにスズランのコサージュを合わせた。


2020年にはホームコレクションであるDior Maison(ディオール・メゾン)でNew Lily of the Valley(ニュー・リリー・オブ・ザ・バレー)としてスズランをテーマとしたコレクションが発表された。
さらに2025年には最新作であるスズランの彫刻が上品なLily Dior(リリー・ディオール)がDior Maisonから発表された。

