Alessandro Michele(アレッサンドロ・ミケーレ)は現代を代表する世界で最も有名なデザイナーの一人だ。
彼のデザインは独創的でファッションというよりもアートの域に達している。
とくにシーズン毎に発表するコレクションには一つの哲学をテーマとして妥協をせずに徹底的に調べあげデザインへと昇華する。
「2015年、私が初めてグッチのファッションショーを行ったときのプレスリリースでGiorgio Agamben(ジョルジョ・アガンベン)とロラン・バルト(Roland Barthes)の言葉を引用したとき、人々はまるで私が脅迫したかのような反応を示した」
そんな努力家でもある天才デザイナーが冗談に語ったあとイタリア語で出版されていた書籍のフランス語版の発表をした。
The Life of Forms — Theory of the Re-enchantment(『形の生命 ― 再魔法化の理論』)はイタリアの哲学者であるEmanuele Coccia(エマヌエーレ・コッチャ)と共著でファッションと私たちの存在、美しさの関係性を記載している。

資本主義が台頭する現代においてファッションは商業的な意味合いが強くどのブランドも有名人を起用したキャンペーンを実施して顧客の獲得に必死である。
ファッション業界において収益性のみが注目される中、Alessandro Micheleは改めて以下のように語っている。
「ファッションは私たちの存在、世界における私たちのあり方を表現する上で基本的な役割を果たすものだと信じています。私にとって哲学はファッションの自然な言語ですらあるのです」
著書の中で二人の思想家が数年にわたって確立されたファッションと現代社会、生活、アイデンティティなどの関わりが複数の章に渡って記述されている。
ファッションとは日常生活と芸術を繋ぐ架け橋であり、異なる世界との出会いを促し、全く異なる他者として人生の旅をスタートすることができる。
さらに包括性を称えてアイデンティティの再構築をすることができる変容の芸術である。

