京都を代表するシンボルといえば歴史ある寺院や神社など様々である。
794年に平安京が日本の首都に移ってから碁盤目状の街並みが築かれ時代とともに多様な思想、技術、芸術、建造物などが誕生した。
京都市内の中心に位置する東寺はその歴史が平安京時代まで遡る建築物である。
東寺にある木造の建造物としては最も高い五重塔は京都のランドマークのひとつでありその荘厳さには圧倒される。

平安京が栄えた時代から約1200年が経過して京都から遠く離れたパリでは現代を代表するファッションブランドDiorが産声をあげた。
戦後の1940年代~1950年代にかけて女性らしいシルエットを強調した革新的なデザインで一世を風靡して以来からパリは現在に至るまでファッション業界の中心となった。
1953年には創業者であるChristian Dior(クリスチャン・ディオール)が来日をして東京、名古屋、京都、大阪でファッションショーを開催した。
日本の文化に魅了されたChristian Diorは自宅に日本画を飾るほどでブランドと日本文化の繋がりが確立された。



1954年の秋冬コレクションには京都の老舗西陣織メーカーの龍村美術織物とのコラボレーションでUtamaro(歌麿)、Tokio(東京)、Rashomon(羅生門)が発表された。
今回のコレクションでもUtamaro(歌麿)、Rashomon(羅生門)に用いられた生地である早雲寺文台裂と宗薫緞子が採用されている。
ほかにも老舗の福田工芸染繍研究所が引染で仕上げたぼかしの染色の着物をモチーフとした作品も登場した。
帯の代わりにベルトを用いてウエストをピンポイントで絞ることでモダンなデザイン完成させた。



Maria Grazia Chiuri(マリア・グラツィア・キウリ)が主導したデザインは二つの文化が自然に融合したコレクションだと感じた。
フランスの洗練されたモードのデザインと日本の伝統的な技術がお互いを尊重しあいハーモニーを奏でた。
飾り気のない黒装束に足袋や下駄などをモチーフとしたシューズを合わせたルックは控えな感じが好ましい。
青色の染め上がられたルックが多く登場して後ろの桜と合わせると幻想的な雰囲気である。
ラストのルックを飾ったのはフローラルのデザインで刺繍が施されたロングドレスが東寺の五重塔と合わせて息を飲むほどの美しさ。


