成長因子(Growth Factor)が皮膚の生成をトリガー
現在、美容業界において再生医療の分野で用いられる成分や治療に注目を集めています。その一つに成長因子があります。成長因子は英語でGrowth Factor(GF)と呼ばれ美容業界で度々目にするようになってきました。
成長因子は特定の細胞の分裂を促進する存在であるといわれています。臨床試験の結果、皮膚の再生に成長因子が有効であるとする最新の研究が発表されたこともあり、様々な製品が開発されています。成長因子とは何か、とくに皮膚に焦点をあててみていきましょう。
成長因子が細胞の活動を促進/制御するためのシグナルを伝達
成長因子やサイトカインは、オートクライン、パラクラインあるいはエンドクライン的に細胞活動を制御するシグナル伝達分子である。これらは、特定の受容体に結合し、関連する下流のシグナル伝達経路を活性化することにより生物学的機能を発揮し、核における遺伝子転写を調節し、最終的に生物学的反応を刺激する。
人間の身体には60兆個の細胞が緻密に機能して成り立っています。その細胞が本来持っている役割を促進するのが成長因子です。例えば皮膚細胞が分裂することで新しい皮膚が生成されますが、成長因子がそのシグナルをターゲットとなる細胞まで伝達します。
より具体的に記述していきます。成長因子は細胞の成長、再生や活性化を促進/制御するタンパク質です。作用するターゲットとなる細胞自身、または隣接の細胞、はたまた全く別の場所で生成されます。成長因子が生成されシグナルが伝達される経路により以下の三つの専門用語で区別しています。
- オートクラインシグナル:ターゲットとなる細胞自身が成長因子を生成する
- パラクラインシグナル:隣接の細胞が成長因子を生成してターゲットとなる細胞にシグナルを伝達
- エンドクラインシグナル:遠くに位置する細胞が成長因子を生成して血液の循環を通してターゲットとなる細胞にシグナルを伝達

成長因子は様々な機能をもっており、それをシグナルという形でターゲットとなる細胞に伝達します。ターゲットとなる細胞のレセプター(受容体)に合う成長因子が結合することで、その細胞内のシグナルに変換され、分裂/活性化/再生などの生物反応を引き起こします。
成長因子は、様々な細胞に作用するものもあれば、特定の細胞に働きかけるものもあります。その種類はいま発見されているものだけでも多数存在します。
その構造や機能の特性で種類分けがされています。とくにスキンケアの分野で注目されている成長因子は以下の4つものがあります。
- Epidermal Growth Factor (EGF):上皮成長因子
- Fibroblast Growth Factor (FGF): 線維芽細胞成長因子
- Insulin-like Growth Factor (IGF): インスリン様成長因子
- Transforming Growth Factor (TGF): トランスフォーミング成長因子

EGF(上皮成長因子)が皮膚のターンオーバーをコントール
人間の皮膚は大きく分類すると表皮、真皮と皮下組織の3層の構造になっています。表皮とは外の世界と身体の境目に位置する平均0.1~0.2mmの薄い膜のことです。外界からの刺激から身体を守るバリアと、水分が蒸発するのを防ぐ保湿といったとても重要な役割があります。
その構造は厚さの異なる4層からなっています。下から順番に基底層、有棘層、 顆粒層、角質層と呼ばれています。80%~95%の割合でケラチノサイトと呼ばれる細胞(角化細胞)により構成されており、この細胞が分裂を繰り返すことでターンオーバーと呼ばれる一定の周期で新しい細胞が生まれ変わります。
EGF(上皮成長因子)が基底層、またはその付近に存在する活発な細胞の上皮成長因子受容体と結合することで細胞の分裂がトリガーされ、上に押し上げるように新しい細胞が生成されます。新しく生成された細胞は約14日間かけて分裂を繰り返し状態を変えて角層までたどりつきます。角層で肌のバリアと保湿の役割をさらに約14日間果たしたあと、皮膚から垢となり剥がれ落ちます。

FGF(線維芽細胞成長因子)が皮膚を形成する基となる細胞を生成
表皮の下の層にある真皮とは表皮の10倍の厚さ(1~2mm)で皮膚を支える役割があり、柔軟性、ハリ、弾力や潤いといったスキンケアの分野では重要な項目に関係しています。
70%程度の割合でコラーゲンと呼ばれるたんぱく質が網目状に張り巡らせて真皮を構成しています。そのコラーゲンを結束するのがエラスチンと呼ばれるたんぱく質です。網目状のコラーゲンの間を埋めるのが基質とよばれ、水分とヒアルロン酸などの有機高分子で構成されています。
コラーゲンとエラスチンが強固に結束することで肌にハリと弾力を与え、どちらも正常な肌には欠かせない存在です。基質のなかのヒアルロン酸には保湿の役割があり、肌の潤いに関わっています。
IGF(インスリン様成長因子)により皮膚土台が成長
インスリンと構造が似ていることとからIGF(インスリン様成長因子)が付けられました。1型と2型の二つの種類が存在します。どちらも下垂体から分泌された成長ホルモンが肝臓を刺激することで生成され、皮膚、骨格や筋肉の成長などに関与します。
1型が小児から成人、2型が胎児の成長に関与することが知られています。肌に焦点を当てると、線維芽細胞に働きかけ、コラーゲン、エラスチンやヒアルロン酸の生成を促し肌の土台を成長させます。
TGF(トランスフォーミング成長因子)が皮膚土台を生成
真皮を構成するコラーゲン、エラスチンやヒアルロン酸は細胞ではないので、表皮のターンオーバーのように活発に代謝されませんが、数年単位で徐々に新しいものに刷新されます。
古くなったこれらの物資は酵素により分解され、(TGF)トランスフォーミング成長因子が線維芽細胞に作用して新しいものの生成を促進させます。
トランスフォーミング成長因子はα(アルファ)型とβ(ベータ)型の二つの種類があることが知られています。アルファ型のTGF-αは上皮成長因子(EGF)の一種であり、上皮の細胞の分裂を促します。ベータ型のTGF-βは骨格の形成や、線維芽細胞に作用してコラーゲンやエラスチンの生産を促進します。

成長因子がスキンケア商品でホットな成分
成長因子の数は加齢とともに減少していきます。成長期の10台後半にその数はピークを迎え、30台になるとその数は急落して半分以下になります。
成長因子が減少することによりターンオーバーが乱れシミの発生の原因となり、新しいコラーゲン、エラスチンやヒアルロン酸の生成がストップして皮膚のハリ、弾力や潤いがなくなり、しわや乾燥の原因となります。
日頃のスキンケアとして成長因子を取り入れることで、皮膚が再生され健康的で若々しい張りと弾力のある肌を維持するアンチエージングの効果が期待できます。
臨床試験により成長因子は肌生成に効果ありだが効果的な使用量はいまだ不明
EGFを配合した製品は、老化した皮膚を効率的に治療し、色素沈着、リュウマチ、乾燥、弛緩を治療するための重要な外用治療手段である。
EGFは、重症例における複数の調査結果によると、皮膚創傷の治癒を進めるのに有効であるが、個々の症例に対する使用濃度や適応を確立するための研究が必要である。
rhEGFを注射すると、皮膚の弾力や張りを担うコラーゲン、エラスチン、ヒアルロン酸を誘導し、より高いアンチエイジング効果を発揮する。しかし、その効果を確実にするためには、投与量や治療プロトコルを特定した、より対照的で無作為な長期追跡臨床試験が必要である。
外部から製造または生成された成長因子入りのスキンケア製品を使うことで肌に良い効果があるのでしょうか。結論からいうと、2022年現在、様々な研究結果が報告されており美容に関する臨床試験の多くで、一定の効果があると結論づけています。
臨床試験により成長因子入りのクリームを塗布することで以下の効果があったことを明らかにしています。
- 新しいコラーゲンの生成により小じわが目立たなくなる
- シミが改善する
- 肌のキメを整え、弾力性のある肌へと導く
- 肌のざらつきを軽減する
さらには成長因子が表皮の細胞を刺激することで、シグナルが連鎖的に反応して、真皮の線維芽細胞も刺激されコラーゲンを生成するような仮説も立てられています。
一方で長期的な期間で安全性や効果を実証するための臨床実験がいまだ実現されていません。またどの程度成長因子を摂取するのが効率なのかといった成長因子の量と肌再生の効果の関係といったこともいまだ不明です。
成長因子は安全だが、過剰摂取に注意
肌生成に効果があるとしても成長因子をスキンケアとして肌に塗布しても安全なのでしょうか。結論からいうと普段のスキンケアとして加齢によって不足した分の成長因子を補う目的であれば問題ないといれるでしょう。
成長因子は細胞で作られている人間の身体にもともと存在する成分であるので、身体に害はありません。敏感肌の人も問題なく使用できるでしょう。
ただ一つ注意点があるとしたら美容クリニックで行われている成長因子を肌にピンポイントで注射する治療です。しわやへこみなど肌の気になる箇所にFGFを直接注入することで線維芽細胞を活性化させコラーゲンやエラスチンを再生させ肌を若返らせるというものです。上手くいけば活気的な治療なのですが、想定よりも細胞が元気になりすぎてしまい、コラーゲンやエラスチンが増えすぎてしこりとなってしまいます。
成長因子がたくさんあることで肌がそれだけ若返れる思われがちですが、本来人間の身体が生産できる以上の成長因子を取り入れてしまうことで不自然な状態になってしまいます。
成長因子は細胞の培養と遺伝子組み換えにより生産
もともと人間の細胞で生産されている成長因子を製品として開発する場合、どのように採取または製造されているのでしょうか。
大きく分けて二つの方法があります。
一つ目は骨髄幹細胞、皮膚細胞、脂肪幹細胞などのヒト幹細胞から採取されます。採取された細胞は実験室で培養され何億個の細胞に増やされます。その培養液の上澄み液には、細胞から生成された天然の成長因子や様々な活性化物質が含まれています。ヒト幹細胞美容液として様々な商品が開発されています。細胞の採取、培養、培養液から幹細胞のみを摘出といった複雑な工程を踏んでいるためどうしても最終的な美容液として消費者に届くころには高価な値段になってしまいます。
二つ目は大腸菌などの細菌から遺伝子組み換え技術を用いて成長因子を製造します。現代の遺伝子組み換え技術により、純度の高い成長因子が大量生産できることにより、成長因子入りのスキンケア製品が比較的安価で入手することができます。
成長因子入りおすすめ化粧品
成長因子入りの化粧品は美容クリニック専売のドクターズコスメなどによくみられます。私が使用して個人的にお気に入りの成長因子入りの化粧品は韓国コスメのEasydew(イージーデュー)やARZTIN(エルツティン)などです。次の記事でこれらのブランドを紹介予定なのでお楽しみにしてください。